売上は伸びたのに、手取りが増えない理由
「法人化して売上も出てきた。
……なのに、手元に残るお金が全然増えない。」
一人社長からよく聞く悩みの正体は、
税金だけではなく「社会保険料」の重さにあります。
- 健康保険(国民健康保険 or 協会けんぽ等)
- 年金(国民年金 or 厚生年金)
この組み合わせをどう設計するかで、
毎月のキャッシュフローも、将来の年金額も、大きく変わります。
ただし、ここで絶対に押さえておきたい大前提がひとつあります。
「節約=加入しない・ごまかす」ではない。
法律を守ったうえで“設計”を工夫することが、本当の節約。
この記事では、一人社長が
合法的に社会保険の負担を“最小限かつ適正”に抑える考え方を、
国民健康保険と協会けんぽの違いも踏まえて解説します。
第1章 一人社長と社会保険の「動かせない前提」
1-1.法人を作ったら、原則「社会保険加入は義務」
まず押さえたいのはここです。
- 法人の事業所(社長一人だけでも)は、原則「社会保険の強制適用事業所」
- 一人社長でも、一定以上の役員報酬があれば
→ 健康保険(協会けんぽ等)+厚生年金への加入が義務
よくある誤解が、
「一人社長だから、国民健康保険のままでいいのでは?」
というものですが、
これは原則として認められません。
- 個人事業主 → 国民健康保険+国民年金が多い
- 法人社長 → 協会けんぽ(健康保険)+厚生年金が基本
つまり、
「法人なのに、節約のために国保のままにしておく」
といった対応は、節約ではなくリスク行為です。
後から2年分さかのぼって保険料を請求されるケースもあり得ます。
1-2.個人事業主のままか、法人化するかで保険の構造が変わる
個人事業主の場合
- 健康保険:国民健康保険
- 年金:国民年金
- 国保の保険料:
- 所得・世帯人数・自治体ごとの料率により決定
- 例えば東京都新宿区で年収300万円・40歳未満のケース
→ 年間約33.1万円(月約2.7万円)が目安
法人(一人社長)の場合
- 健康保険:協会けんぽなどの健康保険
- 年金:厚生年金
- 保険料:
- 役員報酬(標準報酬月額)×保険料率
- 健康保険料率:都道府県ごとに約9.3〜10.5%程度(事業主と折半)
- 厚生年金保険料:給料の18.3%(会社+本人の合計負担)
結論だけ言うと:
- 月々の保険料負担は
→ 一般的に「国保+国年」より「協会けんぽ+厚年」の方が重くなりやすい - ただし、その分
→ 医療給付や将来の年金額は厚生年金側が手厚い

第2章 国民健康保険 vs 協会けんぽ「どちらが安いのか?」
先に結論を書きます。
「どちらが安いか」は、
年収・家族構成・自治体・会社所在地によって変わる。
2-1.国民健康保険の特徴
- 各市区町村が運営
- 保険料は「所得・人数・均等割・平等割・資産」などで計算
- 同じ年収でも
→ 住んでいる自治体によって保険料が大きく変わる - 年収300万円・40歳未満の例(東京都新宿区)
→ 年額約33万円(月額約2.7万円)という試算も
2-2.協会けんぽ(全国健康保険協会)の特徴
- 法人や一部の個人事業主の従業員が加入する公的医療保険
- 保険料率は会社所在地の都道府県ごとに違う
- 令和6〜7年度でおおむね9.3〜10.5%のレンジ
- 会社と本人が折半で負担
- 給付内容(傷病手当金・出産手当金など)は
→ 一般的に国保より手厚いとされる
2-3.単純比較の一例(イメージ)
- 年収500万円(賞与等含む)・独身のケースでの比較例として
- とある試算では、
- 国民健康保険:約3万円/月
- 協会けんぽ(会社+個人):約4.1万円/月
という比較が紹介されています。
- とある試算では、
あくまで一例であり、
「自分の場合どうか?」は
- 住んでいる自治体の国保シミュレーター
- 全国健康保険協会の保険料表
で必ず試算する必要があります。

第3章 一人社長が社会保険負担を「合法的に最小限」に抑える7つのポイント
ここからが本題です。
“払うべきものは払いながら、ムダを減らす”という観点で、
一人社長が押さえたいポイントを7つに整理します。
3-1.ポイント① 「法人化のタイミング」を見直す
すでに法人化している場合は過去の話になりますが、
これから起業する人にとっては非常に重要です。
- 利益・売上がまだ小さい段階
→ 個人事業主(国保+国民年金)の方が、
社会保険料負担を軽く抑えられるケースが多い - 一定規模以上で法人化
→ 税率・信用力・資金調達面などでメリット
“常に法人が得”ではなく、フェーズで見直すのがポイントです。
3-2.ポイント② 役員報酬を戦略的に設定する
社会保険料は、
役員報酬(標準報酬月額)をベースに決まります。
- 役員報酬が高い
→ 社会保険料は増えるが、将来年金・社会的信用も増える - 役員報酬を低く抑える
→ 短期的には保険料が下がるが、将来年金・住宅ローン審査等に影響
また、日本の社会保険では
4〜6月の給与水準を基に、その年の保険料ランクが決まる
というルールがあり、
この期間に残業や手当が膨らむと、
1年間の社会保険料が跳ね上がることがあります。
節約のポイント
- 4〜6月は、極端な一時金や残業代を避ける(無理のない範囲で)
- 給与テーブルは「急上げ・急下げ」ではなく、計画的に見直す
※当然ながら、「実際より低く申告する」といった行為は違法です。
3-3.ポイント③ 配偶者・家族の「扶養」ルールを理解する
協会けんぽなどの健康保険では、
年収130万円未満(条件により106万円未満) の家族は
「被扶養者」として保険料負担なしで加入できる仕組みがあります。
- 配偶者がパートで働く場合
→ 年収をどのラインまでにするかで、
世帯全体の社会保険料・手取りが変わる - 扶養の条件は「税金」「健康保険」「年金」でそれぞれ異なる
→ ここを混同しないことが重要
節約 × 働き方のバランス調整がポイントになります。
3-4.ポイント④ 会社所在地と保険料率の違いを知る
協会けんぽの健康保険料率は、
都道府県ごとに違います。
- 最も低い県と高い県で、
→ 数%程度の差が出る年もある - 法人の所在地で料率が決まる(従業員の住所ではない)
現実的には、
「保険料だけを目的に本店所在地を移す」のは
コスト・手間の方が大きくなりがちですが、
複数拠点を検討している場合、
保険料率の違いも判断材料の一つにはなり得ます。
3-5.ポイント⑤ 「福利厚生」でカバーし、給与に載せすぎない
- すべてを「給与」に乗せると
→ 所得税・住民税・社会保険料の対象になる - 一定の条件を満たせば「福利厚生費」扱いになる支給もある
例↓
- 社内共通の福利厚生(一定条件で従業員全員に提供されるもの)
- 健康診断・人間ドック・インフルエンザ予防接種等
「どこまでが福利厚生として認められるか」は
細かい要件があるため、
税理士・社労士に個別相談が必須ですが、
設計次第では**“手取りを下げずに会社負担で守る”**ことも可能です。
3-6.ポイント⑥ 「節約しすぎない」という発想も持つ
厚生年金は、
国民年金より保険料は高くなる一方、
将来受け取れる年金額も増える制度です。
- 今の保険料負担を下げすぎる
→ 老後資金を「自分で貯め切る」必要が出てくる - 将来の年金・傷病手当金・障害年金・遺族年金など
→ 全て長期的なリスクヘッジ
「今のキャッシュ」と「将来の安心」のバランスを
年齢・家族構成・事業フェーズに合わせて調整することが、
本当の意味での“賢い節約”です。
3-7.ポイント⑦ 専門家と一緒に「設計図」を作る
社会保険は、
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 地方自治体の条例(国保料率)
など、複数の法律・ルールが絡みます。
ネットの記事だけで判断して動くと、
- 未加入が発覚して2年分遡及徴収
- 「国保のままでOK」と言われて加入しなかった結果、是正指導
- 意図せず脱法的なスキームを組んでいた
といったリスクがあります。
だからこそ、
自分だけで最適解を探そうとせず、
税理士・社労士・経営の壁打ち相手と一緒に
“設計図”として社会保険を考えることが重要です。
第4章 「絶対にやってはいけない社会保険の節約術」
最後に、一人社長がやりがちなNGパターンを明確にしておきます。
- 法人なのに、国民健康保険のままにしておく
- 実際の報酬より低い額で届け出る(標準報酬月額の“ごまかし”)
- 形式だけの役員・従業員を作って保険料を操作する
- アドバイスの出どころが不明な“節税スキーム”に乗る
これはすべて、
短期の節約になったとしても、中長期的には高リスクです。

まとめ:社会保険は「コスト」ではなく「設計するインフラ」
一人社長にとって、
社会保険は間違いなく大きな負担です。
しかしそれは同時に、
- 病気やケガのときに会社と家族を守る仕組み
- 将来の年金・老後の土台
- 信用力や融資・住宅ローンの基盤
でもあります。
大事なのは「払わないこと」ではなく、
ルールの中で最適な形に“設計し直すこと”。
- 個人事業主か法人か
- 役員報酬の設定
- 配偶者の働き方と扶養
- 国保と協会けんぽのシミュレーション
- 厚生年金と老後資金のバランス
これらを整理しなおすだけで、
毎月のキャッシュフローと将来の安心は大きく変わります。
1人社長のミカタとしてできること↓
- 現在の社会保険・税負担の棚卸し
- 国保 vs 協会けんぽ・厚生年金のシミュレーション整理
- 役員報酬モデル・扶養ラインの設計サポート
- 税理士・社労士との連携による“合法的な最適化”の提案
「社会保険を減らす」ではなく、
「あなたと会社を守りながら、手残りを増やす設計にする」
そのための伴走を行います。


